第5講 呼吸器系

第5講 呼吸器系 講義スライド(PDF)

主題 呼吸を換気(空気を吸って出すこと)と酸素化(ガス交換)との側面から解説し、それを可能にする肺の構造を解説する。また、呼吸不全を分類解説し、さらに、代表的な肺疾患の病態について解説する。

主題細目  @換気機能 A酸素化機能 B酸素運搬機能 C血液ガス分析 D気道の構造 E肺と胸郭の構造 F肺疾患

概要 @健康な成人では呼吸は毎分15〜17回行われ、1回の呼吸でおよそ500mlの空気が出入りする。肺胞に到達する空気の体積はそこから気道の容積を引いたものである。最大に吸息し最大に呼息(息を吐く)した際の呼吸量を肺活量といい、努力性呼息時の最初の1秒間に全体の呼息量の何%を呼息したかを1秒率という。呼吸運動は横隔膜と胸郭の筋肉の収縮・弛緩によっておこなわれる。それらの筋への基本的な刺激パターンは延髄の呼吸中枢で発生し、神経で伝えられる(注意:同じ不随意運動でも、これに対し、心臓の収縮は心臓内部のペースメーカーに由来する自律的なものである)。肺−肺小葉の集まり−それ自身は自力で膨らんだり縮んだりすることはできず、肺の入れ物(胸郭)の内圧が下がれば膨張(吸息)し、上がれば収縮(呼息)することができる。換気がうまくいっているかは、動脈血中の二酸化炭素分圧(濃度)から推定する。

A気管支の末端の細気管支の端には、球形の肺胞がぶどうの房のように集まった肺小葉がみられる。肺胞は空気に触れる面(内腔)に1層の扁平な肺胞上皮細胞が敷き詰められ、その裏を結合組織でできた上皮基底膜が包んでいる。肺胞の周りを毛細血管が網の目のように囲んでいる。このように肺胞の壁(呼吸膜という)は非常に薄い(厚さ0.5μm)ので、ガスは濃度の濃いほうから薄いほうへ急速に拡散する。そうして、心臓から肺にやってきた酸素分圧(濃度)が低く二酸化炭素分圧が高い血液は肺胞内腔から酸素を取り込み二酸化炭素を肺胞内腔に』放出する。酸素化がうまくいっているかは、動脈血中の酸素分圧、ならびに、肺胞と動脈血との間の酸素分圧の差から推定する。

Bヘモグロビンの役目は酸素を末梢組織まで運び、そこで酸素を放出することである。血液の酸素分圧が少々下がってもヘモグロビンは酸素をそれほどは放出しないようになっていて(つまり、酸素分圧と酸素飽和度との関係の曲線がS字型になっていて)、それを効率的に行うことができる。この曲線の形は酸素をより多く必要とするさまざまな条件のもとで、酸素との結合性を減らす(つまり酸素を放出しやすくする)ように変化する。二酸化炭素の大部分は血液に炭酸水素イオンHCO3の形で溶解して肺に運ばれ、肺胞で二酸化炭素に戻って放出される。

C動脈血の酸素分圧、二酸化炭素分圧、pHを測定することによって、酸素化、換気、体内の酸・塩基平衡(酸性に傾ける物質とアルカリ性に傾ける物質とのバランス)についての指標が得られる。酸素化に関して、肺胞(呼気)と動脈血との間の酸素分圧の差が大きい場合、肺の血流がある部分と換気がある部分との食い違いが考えられる。

D鼻の構造(鼻腔の向き)、咽頭と喉頭の構造、気管と気管支の構造など。

E肺の外側を覆う臓側胸膜と胸郭の内側を覆う壁側胸膜とは連続し、気密構造を作るので、横隔膜の上下ならびに肋骨の上下による胸郭容積の変化によって肺が収縮・拡張する。

F異物、気管支喘息, COPD(慢性閉塞性肺疾患)など