第3講 筋系
主題 筋収縮の機構ならびに、筋収縮を各部位の各運動に変換するための骨・関節との結合のしかたを解説する。
主題細目 @筋収縮の機構 A筋収縮から運動へ B全身の筋 C筋疾患
概要 @1個の筋細胞は1本の筋線維である。筋線維には神経の末端が到達している。骨格筋は筋線維が結合組織で束ねられ筋膜に包まれたものである。筋細胞の中は筋原線維の束で満たされている。筋原線維はアクチンとミオシンの線維の束であり、これらは互いに滑りあうことができる。神経の刺激で、筋細胞内で筋原線維を取り囲む小胞体からカルシウムイオンが放出されるとミオシンがアクチンを引き込むような互いの滑りがおきて、筋原線維が収縮する。カルシウムイオンが小胞体に回収されると引き込みが解除され筋原線維は弛緩する。筋収縮のエネルギーは呼吸の結果生じるATPをADPに分解することで生じ、ATPを速やかに再生するために筋はクレアチンリン酸を蓄えている。収縮を続けると筋は乳酸が蓄積して収縮力が低下する(疲労)。
Aいくつかの例外を除き、筋の両端は骨に付着し、起始と停止といわれる。どの神経がどの筋に刺激を与えるか決まっていて、○○神経の支配を受けている、という。関節をまたぐ筋が収縮すると関節の動きがおきる。ある動きを実現するには複数の筋がグループとしてはたらき、ある筋が収縮すれば他の筋が弛緩する。肘関節、股関節、膝関節を例にとって、関節の動きと筋との関係を解説する。
B全身の骨格筋は7箇所の部位に区分されるが、その区分と動く部位は必ずしも一致しない。ある部位において、何らかの動きのためにまとまってはたらく、あるいはさらに細かい部位に分けた、筋の集まりを筋群という。筋の名前には、形を反映したもの、部位を反映したもの、実現する動きを反映したもの、などがあり、類似のものを前・後、外・内、上・下などの位置関係や、大・中・小という大小関係などで区別していることがある。体幹ならびに上下肢の神経支配はおおむね、上から順番に頚神経叢(頚部と胸部)、腕神経叢(胸部と背部と上肢)、胸部脊髄神経(腹部と背部)、腰部神経叢(背部(腰部)と下肢(大腿))、仙骨神経叢(下肢(下腿))由来の神経による。
C先天的な疾患が多い。代謝病(など)。構造タンパク質の異常(Dechenne型筋ジストロフィー(ジストロフィン)など)。神経・筋接合部の疾患(重症筋無力症)
参考:
筋収縮形態 Type of muscle contraction(理学療法士による身体活動研究 より。以下同じ。)