第1講 人体の構成要素と場所

講義スライド(PDF)

主題 人体での場所の記述方法について解説する

主題細目 @人体体表各部位の名称 A臓器の名称 B体表からの方向を示す線と面 C系統(器官系) D細胞・組織・器官(臓器)

概要 @地球上の場所を緯度と経度で表現するよりは国と住所で表現したほうが理解しやすいように、人体体表での場所を表現するときは部位名のほうが理解しやすい。理解のためであるので、部位の区分のしかたは必ずしも1種類ではなく、また、部位どうしが階層的な包含関係(part-of)関係にある。従って特定の場所を差したとき複数の部位名に属することがしばしばある。部位名は筋肉や骨の体表への投影と関連付けて名付けられていることがある。また、診療科の一部には部位名によって命名されているものもある。

A地球では内部構造は地殻、マントル、コアのようにまとめて理解される(少なくとも初等教育的には)が、一方、人体の体表の下は多様である。そこで、人体内部の特定の場所を表現することが重要である。場所の表現には、座標のかわりに臓器名が用いられる。ひとつの臓器はさらにpart-of関係によって階層的に関係付けられる、名づけられた構造物からできている。臓器名もまた、診療科の名称となっている。

B体表の特定の場所から体内の特定の方向に手や器具を安全に到達させる方法を記述するために、人体の特定の断面にどのような臓器があるかの知識が重要である。体表における方向線の種類は断面の体表との交線を、断面の種類は断面の向きを、それぞれ理解しやすいように記述するために用いられる。また、これら(体表における方向線ならびに断面の種類)は、体内からの透過X線、核磁気共鳴が発する電波、超音波の反射、放射性薬剤からのγ線等を検知して構成した断面像が人体のどの場所での平面なのかを説明するためにも用いられる。また、「身体の位置に関する用語」は体表の部位名をさらに区分けするだけではなく上下肢・体幹の動きの方向を表現するためにも用いられる。体位を表す用語は患者の状態の記述や患者介助者への指示に用いられる。

C器官系は人体を機能的な観点から区分するために便利な分け方である。そして医療は特定の器官系を対象として専門分化していることが多い。「◯◯科」として何があるか考えてみるとよい。機能的な区分であるので、人体のある部位が複数の器官系に属するということもあり得る。

D細胞は生体を構成する最小の生きている要素である。同じ働きをもつ同類の細胞が集まって一定の働きをするものを組織という。器官(臓器)は複数の組織が一定の構造をもってある働きをおこなうものである。従ってAで場所の名前として臓器を紹介したが生物学的な根拠を伴うものである。組織は臓器に固有のものが多いが、結合組織や血管内皮組織のようにいろいろな臓器に分布する組織もある。"